離婚の進め方について

悩む男女

ここでは、離婚をしたいと考え始めたときに、どのように進めていけばよいかについて、お話をしていきます。

1 離婚後の生活を想像する

(1)自分が本当に望む生活はなんだろう?

まずは、それが実現するかどうかということはいったん措いておき、ご自身が離婚後、どこで誰とどのような生活を送っていきたいのか、漠然としたイメージでいいので想像してみてください。

「どこで」というのは、たとえば、今いる家に住み続けるのか、あるいはその家を出てどこか別の場所に住むのかということです

「誰と」というのは、たとえば、お子様がいる場合にはお子様と一緒に生活をしていくのか、あるいはお子様とは一緒に生活せず、面会交流という形で交流を図っていくのかということなどです。

「どのような」というのは、自由に想像してみてください。
毎日喧嘩ばかりの生活から解放される自分、暴言や暴力を受けても、子どものためにとか経済力がないからと我慢して、ただ黙ってやり過ごすだけの生活から解放される自分、相手が作った借金の返済々から解放される自分・・・。

そのような想像をしてみたとき、「今よりも楽しそうだ。」と思う気持ちが少しでもあるのなら、離婚について前向きに考える時期です。

(2)自分が望む生活をイメージすることの意味とは?

離婚をしたいと思ったとしても、今あるものは全て手放したくないと考える人が多いでしょう。

ただ、相手と離婚の交渉をする中では必ず、何かを譲らなければいけないという場面に遭遇します。
そのとき、自分が本当に望んでいるのは何かが分からないと、全てを手放したくないという思いだけが募り、相手の言い分にただただ憤り、時間だけが過ぎていきます。

他方で、もし、自分が本当に欲しいものは何かということが漠然とでもつかめていれば、何を捨てて何を得ればいいのかを、戦略的に考えることができるはずです。

これが、自分が望む生活をイメージすることの意味です。

(3)相手のことは考えない

自分が望む生活は何かについて考えるとき、相手のこと、もっというと、相手への仕返しについては考えない方がいいと考えています。

よくあるのが、相手が不貞をしていた場合に、「今離婚すれば、相手が不貞相手と幸せになってしまう。」と考えて、それが嫌だという理由だけで、離婚をしないと決めることです。
相手のことを考え始めると、本当に自分が欲しいものは何かという視点がぼけてしまいます。

2 相手(配偶者)の収入や財産を把握する

離婚したい、あるいは、離婚について前向きに考えてみたいと思ったときには、相手と同居している間に、相手の収入や財産に関する情報や資料を取得しておくのが得策です。

収入資料は、婚姻費用を請求するときに重要な資料となりますし、財産に関する資料は、離婚の際の財産分与で重要になるからです。

もっとも、今後、離婚の話合いを進める中で、相手が自分の収入資料や財産資料を正直に開示してくれればいいのですが、中には、婚姻費用をできるだけ低額にしたいとか、財産分与をしたくないという理由で、資料を開示しない人もいます。

そうなった場合でも、給与をいくらもらっていたかや、どの金融機関に口座を持っていたか、どの生命保険会社や証券会社と契約していたかなどの情報をご自身が持っていれば、交渉を進めやすくなります。

そして、このような相手の財産に関する情報は、同居している間の方が入手しやすいといえます。

収入が分かる資料としては、給与明細や確定申告書類、財産に関する資料としては、通帳や保険契約書類、株式配当に関する書面が考えられます。
これらの資料が保管されていないか、こまめに確認してみましょう。
これらの資料を見つけることができた場合には、コピーや写メを取るなどして、証拠として残しておくことが重要です。

3 別居の準備をする

離婚が決まれば通常、相手とは別居することになります。

また、多くの場合、離婚前に別居をし、別居した状態で離婚に関する交渉を行っていきます。

そのため、離婚について前向きに考えるようになったら、別居の準備を少しずつ進めていく必要があります。

別居するとなれば当然、住む家が必要となりますし、引っ越し費用や、当面の間の生活費も必要になります。
ご自身が婚姻費用をもらえる立場にあったとしても、必ずしも相手が別居後すぐ婚姻費用を払ってくれるとも限りません。
また、ご自身が婚姻費用を相手に払う立場にあった場合、ご自身の生活費と相手に支払う婚姻費用を用意する必要が生じることも考えられます。
いずれの場合も、別居によりご自身の生活が破綻することのないよう、経済的な基盤をこれまで以上に固めておく必要があります。

別居にあたっては、多くのことを考える必要がありますが、慎重かつ確実に準備をしていきましょう。

4 交渉を開始する

離婚に向けての自分の気持ちが固まり、相手の収入や財産に関する情報も取得し、別居の準備も整った。

ここまで来ればようやく、相手に離婚について切り出すことができます。

もっとも、最初から弁護士が交渉の窓口に立ってしまうと、相手の態度が頑なになってしまうことも考えられます。
そのため、最初は当事者同士で話をしてみることをお勧めします。
ご自身が離婚したいと考えていることを伝えるとともに、相手が離婚についてどう考えているかを聞いてみてください。
もし相手が離婚を拒むようであれば、なぜ拒むのかを聞いてみましょう。
世間体を気にしているのか、財産分与のことを気にしているのか、慰謝料の金額を気にしているのかなど、離婚することについて相手がネックに感じている部分は何かについて探ってみてください。

他方、相手が離婚に同意するようであれば、さらに財産分与や親権者などについて話を詰めて、離婚にまでいければよいのですが、もし条件面で争いが生じるようであれば、一度は弁護士に相談してみるのがよいでしょう。

6 公正証書を作成しましょう

当事者間の協議で離婚ができる場合には、当事者が離婚届に署名をして役所に提出すれば離婚が成立します。

もっとも、夫婦の間にお子様がいる場合や、財産分与が発生する場合には、公正証書を作ることをお勧めします。
公正証書は、相手が約束に従って養育費を支払わなかったり、財産分与に応じなかったりした場合に、民事訴訟を起こすことなく、強制執行することができる書面です。

ただ、この公正証書については、注意が必要です。
この公正証書を、当事者だけで作成する方も多くいますが、実は、公正証書に記載した文言が不適切だったために、強制執行をしようとしたもののできなかったという事例も少なくありません。
公正証書は、法律の専門家である裁判官が作る判決の代わりとなる書面ですので、その文言は、判決文と同程度に正確に記載する必要があります。
公正証書は、相手が支払いを怠ったときにとても役に立つ重要な書面ですので、公証役場に持ち込む前に一度は弁護士に内容を確認してもらうことを強くお勧めします。

7 調停・訴訟

協議で離婚が成立しない場合には、調停に移行します。
調停は、調停委員という第三者を交えて、家庭裁判所で離婚について話をする手続きです。
もしこのとき、相手方に代理人弁護士がつくようであれば、ご自身も弁護士をつけた方がいいと思われます。

調停でも離婚が成立しない場合には、訴訟に移行します。
多くの場合、調停までで離婚が成立していますが、話し合いでは相手と折り合いがつかない場合には、訴訟に移行します。

8 まとめ

ここまで、離婚を考え始めたときのその後の流れについて、簡単に説明してきました。
あくまでも一般的な流れですので、このように進まないことも多くあるでしょう。

離婚は今後のご自身の生活に影響するものですし、多額の財産が移動することもある手続きです。
離婚を進める中で迷うことがあれば、信頼できる弁護士に相談することをお勧めします。

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弁護士狩野優理子(元検察官)
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