y-kano

財産分与

特有財産の主張は認められなかったものの、「一切の事情」として多額の預金を相続したことを考慮して、財産分与額を減少させた事例(東京高決令4.3.25参照)

相続財産約3600万円のうち、一部については基準時に残っていたと認められる証拠がなく、特有財産であるとして財産分与の対象から除くことはできないものの、「一切の事情」として、財産分与額を減少させる方向の事情として考慮した事例。
婚姻費用・養育費

妻が自宅を出て近隣住宅を借りたことは、夫の不貞関係の発覚等やむを得ない事情によること等から、住居費のうち標準算定方式で考慮されている住居費を超える分につき収入比で按分して負担すべき等とした事例(東京家審平成31.1.11)

妻が別宅を借りた経緯が、夫の不貞関係の発覚、夫による退去指示等やむを得ない事情によるもので、その広さや家賃も不当とは言えない場合に、標準算定方式で考慮されている部分を超えた分につき、収入比で按分した金額を夫も負担すべき等とした。同居時にしていた習い事代についても、収入比で按分した金額を夫も負担すべきとした。
婚姻費用・養育費

妻から夫への婚姻費用分担請求につき、別居と婚姻関係悪化の根底には妻から子に対する暴力行為があり、妻の責任が大きいとして、婚姻費用分担請求は信義則違反ないし権利濫用であるとした事例(東京高決平31.1.31)

妻の長男に対する暴行により別居が開始され、これにより婚姻関係が一挙に悪化し別居の継続により不和が深刻化している状況、妻に一定の収入があり夫が子の私学費等を負担している経済状況から、妻からの婚姻費用分担請求は信義則違反ないし権利の濫用であるとした
その他

元妻から元夫に対する財産分与調停申立て事件において、元夫名義の金融資産等の調査嘱託への回答を拒否した金融機関について、公法上の義務違反はあるものの、元妻に対する不法行為は成立しないとした事例(那覇地判平31.2.20)

調査嘱託を受けた金融機関には、正当な理由がある場合を除き、裁判所に対する公法上の回答義務があり、故意又は過失により同義務に違反して回答しない場合には、調査嘱託を求めた当事者に対する不法行為を構成する場合もある
監護権・子の引渡し

別居中である母が父に対し、子らの監護者の指定及び引渡しを求めた事案において、母を監護者として子の引渡しを命じた原審判を取り消し、母の申立てをいずれも却下した事例(福岡高決令1.10.29)

同居中の監護実績に父母で明らかな差異はないとした上で、就学後の子らについて監護者を定めるに当たっては、従前からの安定した監護環境ないし生活環境を維持することによる利益を十分考慮する必要があるとして、子が別居後の環境に適応し、父にも親和していること等から、母を監護者とした原審を取り消した。
面会交流

父と子の直接交流を認めなかった原審を基本的に維持しつつ、間接交流のため母から父に対し子らのメアド等を通知すべきとする限度で原審を変更した事例(東高決令1.8.23)

19,16,14歳の子が父との直接面会を強く拒否する場合に、間接交流に留めた原審を維持する一方、子らが抵抗感を感じるとしても、関係修復のために簡便で効果的な連絡手段としてメールやLINEによる間接交流を認めるべきとして、母にこれらを父に通知するよう命じた。
その他

妻からの離婚請求に対し、夫にデリヘルの利用、ゲーム課金による浪費等の事情は認められるものの、同居期間7年余、別居期間2年、未成年子2人等の事情から、離婚は認められないとした事例(横浜家裁平31.3.27)

夫のデリヘル利用(1回から数回)やゲーム課金(約33万円)、家計現状についての説明不足等の事情はあるも、夫の独断専行の家計管理ではなかった、別居後は夫なりに誠実な対応をしていた、夫同居期間7年3か月、8歳と5歳の子あり、別居期間2年であることから、関係修復の余地はあるとして、離婚請求は認められないとした
不貞行為

別居直前まで表面上は平穏な生活を送っており、別居から約1年後に不貞行為がされたとしてもその時点で婚姻関係は破綻していなかったとして、慰謝料100万円を認定した事例(東京地判令1.5.16)

夫が家を出る直前まで夫婦で旅行や買い物に行くなど平穏な生活を送っており、別居から約1年後に夫の不貞が発覚するまで婚姻関係が破綻したことをうかがわせる特段の事情もないことから、不貞行為時に婚姻関係は破綻していなかったとした。
その他

婚姻関係破綻の原因は、元妻が婚姻生活において多額の費用を支出する状況下で、元夫が多額の借金の残高等の説明を元妻にしてこなかったこと等専ら元夫にあるとし、元夫に慰謝料80万円の支払い義務を認めた事例(東京地判令1.5.24)

婚姻当初から元妻が生活費の大半を支出する一方、元夫は多額の借金の存在や返済状況等を明らかにせず、自己破産に至っても説明をしなかったこと等から、破綻の原因は専ら元夫にあるとして、80万円の限度で慰謝料を認定した
不貞行為

仮に肉体関係を持っていなかったとしても、不貞行為とは夫婦関係を破綻に至らせる可能性のある異性との交流、接触であればこれに該当する等として、慰謝料額を250万円と認定した事例(東京地判令1.5.30)

メールのやり取り、夜間2人で部屋で密会していたこと等から妻と不貞相手が親密な関係にあり、また、妻が密会について夫に虚偽の説明をしていたこと等から、密会時に肉体関係を持ったことが十分に推認でき、仮に肉体関係を持っていなかったとしても、密会は、婚姻関係を破綻に至らせる可能性のある異性との交流、接触であり、不貞行為に該当し得る
タイトルとURLをコピーしました