事案概要
令和2年に婚姻、翌年第1子誕生、令和4年3月に妻が子を連れて別居。
4月14日、夫婦は以下のメッセージのやりとりをした。
夫から妻 「生活費を送っていないので振り込みます」「金額は(中略)5万円とさせてください」
妻から夫 ①「5万円で承諾しました」、②「養育費並びに慰謝料、(中略)最低限の生活費(中略)を頂けるのであればもう再構築は望みません。金額については分からないので、専門家と相談させて頂きます」
6月、妻が、算定表による婚姻費用の支払いを求めて婚姻費用分担調停申立て。
原審(長野家裁伊那支部審判R5.1.20)
結論
メッセージ①により、4月14日に、婚姻費用の額を毎月5万円とする合意が成立した。
理由
メッセージ②は、離婚時又は離婚後にされるべき金銭給付に関するもので、婚姻費用に関するものではない
抗告審(東京高決令5.6.21)
結論
婚姻費用は、算定表に基づき、月額11万円
理由
・夫婦間で、婚姻費用について、両者の収入等を踏まえて具体的な協議がされていない
・メッセージ②につき、妻が、婚姻費用と養育費等の給付を区別できていたか疑問がある
・14日のやりとりで婚姻費用の分担額について確定的な合意があったと認めるのは相当でなく、暫定的な金額についての提案と承諾にとどまる。