同居したことがない夫婦間において、夫の妻に対する婚姻費用分担義務を認めた事例(東京高決R4.10.13。横浜家審R4.6.17の抗告審)

2つの家 婚姻費用・養育費

事案概要

R2.1~ よく会うようになる
 6.6  交際開始
 8.13 婚姻届出(妻37歳、夫41歳)。
     結婚式場探し、ウエディングドレス購入
     新居探し
 9   新居の賃貸契約(10/17入居予定)
     家財搬入   
     夫婦共に知人に結婚報告
     毎週末ごとにホテル宿泊や名所巡り
 10.9 最後の週末婚として妻が夫の部屋に宿泊
 10.12 妻が夫との同居を拒否
 10.14 妻が夫に生活費の支払いを要求
    夫には会わなくなる

判断枠組み

夫婦は、婚姻関係に基づき互いに協力し扶助する義務を負い(民法752条)、婚姻から生ずる費用を分担する(民法760条)。この義務は生活保持義務であり、夫婦が別居している場合でも異ならない。【原審と同様の判断】

婚姻費用分担義務は、婚姻という法律関係から生じるものであって、夫婦の同居や協力関係の存在という事実状態から生じるものではない。【原審と異なる判断】

(したがって)仮に婚姻関係が既に破綻していると評価されるような事実状態に至っていたとしても、前記法律上の扶助義務が消滅するということはできない。
もっとも、婚姻関係の破綻について専ら又は主として責任がある配偶者が婚姻費用の分担を求めることは信義則違反となり、その責任の程度に応じて、婚姻費用の分担が認められない場合や、婚姻費用の分担額が減額される場合がある。

結論

妻と夫は、互いに婚姻の意思をもって婚姻の届出をし、届け出後直ちに同居したわけではないものの、婚姻関係の実態がおよそ存在しなかったということはできず、婚姻関係を形成する意思がなかったということもできない。
また、仮にその婚姻関係が既に破綻しているとしても、その原因が専ら又は主として妻にあると認めるに足りる的確な資料はない。

(結論として、夫に対し、始期を婚姻費用分担調停を申し立てた令和3年4月とし、その年の収入に基づいて月6万円の婚姻費用分担義務があるとした。)

備考

原審の判断はこちら → https://y-kano.com/archives/362

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