妻が自宅を出て近隣住宅を借りたことは、夫の不貞関係の発覚等やむを得ない事情によること等から、住居費のうち標準算定方式で考慮されている住居費を超える分につき収入比で按分して負担すべき等とした事例(東京家審平成31.1.11)

家賃と書かれたオブジェ 婚姻費用・養育費

事案概要

・平成21年 婚姻
・平成22年、24年 子ら出生
・平成29年7月 妻(申立人)が夫(相手方)の不貞行為に気付き、解消解消を求める
・平成30年2月 夫が自宅(賃料月額21万円)を出て別居、妻に自宅からの退去求める
・同年4月 妻が夫に対し、婚姻費用分担調停申立て
・同年6月 妻が子らを連れて近隣賃貸住宅へ転居(賃料月額10万円)

※ 夫と妻が従前居住していた居宅は、夫が代表取締役を務める株式会社が賃貸したもので、家賃の4割を会社が負担していた。
※ 夫の不貞相手は、同社従業員であった。

判断 争点1:妻の住居費

争点1は、妻の住居費につき、夫にいわゆる標準算定表で考慮されている額を超える部分の分担義務があるかである。

妻が賃貸住宅を借りて家を出た経緯

妻が現在の賃貸住宅を借りたのは,主として,平成29年7月に夫の不貞関係が発覚し,その後,代理人弁護士を通じて夫に不貞関係の解消や不貞相手を会社から退職させるよう求めていたが,事態が進展せず,そのうち,夫が,同居宅を出た上,妻に対し,同居宅から出るよう繰り返し求めたためであると認められるのであり,基本的には,夫の一連の行為によってやむを得ずに転居したものであると認められる。

賃貸物件の広さ、賃料

近隣の住居を借りたのも,夫婦の問題には関係のない,子らの生活環境の変化を最小限にしようとするものであって合理性があり,その広さや賃料額も,従前の生活や親子3人の一般的な生活水準に比して不相当に広く,高額であるということもできない

収入比で按分すべき

・これらを考慮すると,本件においては,夫には,妻の住居費につき,標準算定方式で考慮されている額を超える部分につき収入比で按分して分担すべき義務があると定めるのが公平にかなうというべきである。

・標準算定方式において年収200万円未満の世帯の標準的な住居費(特別経費の一部)として考慮されているのは2万7940円であるから,夫は,妻の実質賃料月額10万0625円のうち上記金額を超える7万2685円について,双方の収入比(相手方:申立人=1404万円:93万円≒14:1)に応じて分担すべきであり,6万7839円を分担させるのが相当である(ただし,この分担義務が生じるのは平成30年6月以降である)。

判断 争点2:子らの習い事費用

争点2は、子らの習い事費用の分担義務の有無である。

判断枠組み

一般に,子の学校教育に要する費用は標準算定方式において考慮されているが,習い事の費用は同方式において考慮されているものではない。
そして,習い事は,通常の学校教育とは別に任意に行うものであるから,原則として,子の監護者がその責任と負担において行うべきものであるが,義務者がその習い事をさせることについて従前同意していた場合などには,適切な範囲で義務者に負担させるのが相当である。

夫が同居中から習い事に賛成または特に反対していなかったこと

二男は,2歳である平成26年からスイミングスクールに通い,長男も,平成27年から同所に通っていること,また,ピアノ教室には,長男,二男とも,平成27年から通っていること,夫も,同居中,これらについて賛成し,または特に反対することなく費用を負担していたことが認められる。

収入比で按分すべき

収入比に応じて、夫は月の習い事代のうち、15分の14を分担すべきとされた。

結論

・婚姻費用は月額26万円
・妻の実質賃料額について、標準的な住居費を超える部分について収入比に応じて分担する2万7839円
・子らの習い事代について、収入比に応じて分担する4万0017円
・これらの合計を毎月の婚姻費用として支払うべき

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