婚姻費用に関し、私立高校学費等について、世帯収入に対応する公立学校教育費を算出した上で、これを超える支出分につき基礎収入に応じて按分するとした事例(東京高決令2.10.2)

学費と記載された封筒と現金 婚姻費用・養育費

事案概要

・平成11年~ 婚姻、2子をもうける
・平成30年 夫が自宅を出て別居
・平成31年 妻が夫に対し婚費用分担調停申立て(後に審判移行)

原審及び抗告審の判断

・当事者の年収は、妻が約130万円、夫が約970万円であり、標準算定表に当てはめると、婚姻費用分担額は1か月当たり22万円ないし24万円程度と試算される
・長男は大学受験のために予備校に進学し、長女は私立高校に在学しているところ、標準算定方式における標準的な生活費指数には、公立高校の学校教育費相当額分が考慮されているにとどまるから、未成年者の学費のうち、上記教育費相当額を超える部分について、妻と夫の基礎収入に応じて按分するのが相当である
・標準算定方式における公立学校教育費として、世帯年収761万7566円に対する25万9342円(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究39頁、45頁)が考慮されているから、本件当事者においては、その世帯収入(約1100万円(=約970万円+約130万円))に照らし、約37万円(≒25万9342円÷761万7556円×1100万円)が学校教育費として考慮されている
・したがって、長男の学費等のうち75万円(=約112万ー約37万円)と長女の学費等のうち40万円(=約77万円ー約37万円)を妻と夫の基礎収入に応じて按分して負担すべきである
・夫は、上記超過分のうち87%(≒388万円(=980万円×0.4)÷445万2000(=388万円+57万2000円(≒130万円×0.44))を負担することになる
・したがって、妻が長男、長女のために負担した学費等のうち、夫が負担すべき部分は、長男につき月額5万4000円(≒75万円×0.87÷12)、長女につき月額2万9000円(≒40万円×0.87÷12)となる

結論

・婚姻費用月額は、長女の学費等を加算した月額25万円
・長男の大学進学費用、長女の大学受験費用及び進学費用等は、算定するに足りる資料がないので考慮しない

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