事案概要
・平成26年 婚姻
・平成27年 未成年者出生
・平成31年1月 母(相手方)が未成年者を連れて実家に帰り、別居開始
・同年2月 父(申立人)が本件審判及び仮の地位を定める仮処分申立て
・同月 妻が婚費調停及び離婚調停申立て
・令和2年 原審が父を監護者と指定し、子の引渡しを命じる
原審に対し、母が即時抗告
なお、母は精神障害等級3級の認定を受け、メニエール病の診断を受けており、2か月以上入院したことがあり、父はこれを理由に母の監護者としての適格性が欠ける等主張した
原審判断
原審は、未成年者の別居前及び現在の監護状況、父母の監護能力、監護補助者を含めた監護態勢、未成年者の年齢、心身の発育状況、父又は母との関係性その他本件に現れた一切の事情を考慮し、未成年者の福祉の観点から、未成年者の監護者を父と指定し、母に対し父への未成年者の引渡しを命ずる旨の審判をした
判断
・別居前の未成年者の主たる監護者は母であったといえ、従前の母による監護に未成年者の福祉を害するような問題があったとは認められない
・母が入院した際に、未成年者は一時保護されたが、一時保護が解除された後の母による未成年者の監護状況や母と未成年者の関係性に特段の問題は認められず、未成年者は母の監護の下で健康かつ規則正しい生活を送っている
・現在の母の心身の状況は未成年者の監護に専念することが可能な程度にまで回復しており、今後、母が再入院することになったとしても、同居する母の父母が未成年者が住み慣れた環境である母の実家で監護する方針である
・母は、当初面会交流に消極的な姿勢を示したことがあったものの、退院した後、父と未成年者の面会交流の機会が継続的に得られるように努めており、現在では第三者の保育者を利用して、2か月に1回の頻度で面会交流が実施されている
・(その他の消極事情を考慮しても)子の福祉の観点からは、未成年者の監護環境を、別居前の主たる監護者であり、別居後も継続して未成年者を監護している母の下から、監護実績の乏しい父の下に変更するまでの必要性は認められない
結論
母を監護者と定めるのが相当、子の引渡しを求める父の申立ては理由がない