事案概要
別居後、申立人が相手方に対し、婚姻費用分担調停の申立てをした事案。
申立人は、生活保護費及び障害者年金(基本年金・子らのための加算額計約130万円)を受給している。
婚姻費用算定に際し、申立人が受給している生活保護費及び障害者年金を収入と評価すべきかが争点となった。
判断
生活保護費
生活保護は、国が最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長する目的で行われているものであり、原則として世帯を単位として行い、扶養義務者の扶養等に劣後して行われるものであるから、相手方が負担すべき婚姻費用分担額算定に当たって、申立人が受給している生活保護費を申立人の収入と評価することはできない。
申立人が、相手方から後日婚姻費用分担金額の支払いを受ければ、生活保護法に基づき同額を返還することになる可能性があるにとどまる。
障害者年金
子らのための相当額の加算もあり、受給する申立人及び子らの生活保障の一部といえるから、申立人の収入と評価するのが相当である。
ただし、障害者年金は職業費を要しない収入であり、標準算定方式の前提となった統計数値により、全収入における職業費の平均値である15%で割り戻すのが相当である。
結論
そうすると、申立人の年収は、障害者年金130万5200円を給与収入と擬制すれば153万5529円(130万5200円÷0.85。1円未満切捨て)となる。
備考
生活保護費につき、同様の判断をした事例として、東京高決令4.2.4がある(https://y-kano.com/archives/427)