女性が夫に手紙を贈ったことや、夫が女性方の合鍵を所持し、マンションに出入りしたことがあった等の間接事実からは、不貞行為を推認することはできないとした事例(東京地判令1.6.21)

崩れた積み木 不貞行為

事案概要

・平成7年 婚姻
・平成26年5月 女性(被告)が夫(参加人)と知人の紹介で知り合う
・同年11月 女性が夫に対し、誕生日祝いとして本件手紙1等を贈る
・平成27年9月 女性が夫に対し、本件手紙2を贈る
・同年12月 妻(原告)が夫に対し、浮気を追及し、夫は浮気を否定せず謝罪
・翌日 夫が自宅を出て別居開始
・平成28年2月 夫が妻に対し、離婚調停を申立てるも不成立
・同年3月 夫が女性の設立した本件会社の店舗で無給で手伝い始める

※ 本件手紙1「Bさんが大好きです♪だから、今は毎日がとっても幸せ♪」等
  本件手紙2「明日、ちゃんと帰るからね」「2人だったらいつも楽しいことしかないもんね!」等

妻が女性に対し、夫と不貞行為に及んだとして損害賠償等800万円等を求め(第1事件)、夫(参加人)が独立当事者参加をし、女性と不貞行為に及んでいないとして債務不存在を求めた(第2事件)

判断(不貞行為の有無)

手紙

・本件手紙1及び本件手紙2には単なる友人関係にある者同士ではあまり用いられない文言が用いられており、平成27年8月当時、女性が夫に対し恋愛感情を持って接していたこと、女性と夫が仕事と無関係に二人で会う関係であったことをうかがうことができる
・しかしながら、本件の証拠関係を検討しても、本件手紙1及び本件手紙2に対し夫がどのような返答をしたのかは明らかではないし、これらの手紙を贈った時点において女性と夫が一緒に住んでいたとも認められない
・そうすると、女性が夫に対して本件手紙1及び本件手紙2を贈った事実から女性と夫が不貞関係にあったと断定するには足りない

夫による女性方の合鍵所持、マンションへの出入り

当事者の主張

・妻は、夫が本件居室(女性の居宅)の合鍵を所持し本件マンション(本件居宅が入っているマンション)に出入りしたことを根拠に夫が女性と本件居室において同居していたと主張する
・女性は、本件会社を手伝っていた夫に対し駐輪場代の節約のために本件居室前のスペースを貸していたにすぎず、本件居室は本件会社関係の資材を置く倉庫のような状態になっていたため、当時は交際していた男性の居室に寝泊まりしていたと供述
・夫は、別居後平成29年9月頃まで横浜市の実家に居住しており本件会社の店舗へは実家から通勤していた、(中略)駅から本件会社の店舗までは自転車で通勤しておりその自転車を止めるために本件居室の合鍵を借りていた、(中略)旨供述

認定

・証拠(甲10,11。探偵業者による調査報告書中の編集された写真及び動画)によれば、夫が、平成28年8月頃から9月頃までの間、本件居室の合鍵を所持しており、平成28年9月1日の午前0時過ぎに本件マンションのエントランスに入り、同日午前10時過ぎに本件マンションのエントランスから出てきたことがあったことが認められる
・しかしながら、平成28年9月1日の午前0時41分よりも後に夫が本件マンションから出た可能性を完全に否定することができず、夫が本件居室に寝泊まりしたとまでは断定できない
・また、仮に夫が同日本件居室に泊まったとしても、甲10によれば、女性は、同日午前7時から午後1時半まで本件マンションから出た形跡がなかったというのであり、当時交際していた男性宅に寝泊まりしていたとの女性本人の供述をも併せ考慮すると、女性が本件居室に滞在していなかった可能性も否定できない
・上記写真及び動画には、女性と夫は同じ店舗で働いているにもかかわらず、一緒に行動している様子が一切撮影されておらず、言葉を交わしている様子もうかがわれない上、店舗の閉店後も一緒に食事をするでもなく全く別行動を取っているなど、両者が親密な関係にあることをうかがわせるような場面が一切存在しない
・そして、上記の写真及び動画において、夫が本件マンションに出入りする際には、必ず自転車を所持している
・夫が女性と同居していたと認めることはできない

結論

女性と夫が継続的な不貞行為に及んでいることを認めるに足りる証拠はない。
第1事件は請求棄却、第2事件は認容

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