母が双子を連れて自宅を出た事案につき、長女の監護者を母とし、母方を無断で出て父方で居住している長男の子の監護者を父と指定した事例(大阪高決令1.6.21)

自転車にのる父と子 監護権・子の引渡し

事案概要

・平成16年 婚姻
・平成19年 長男・長女出生
・平成29年 母(申立人)が未成年者らを連れて転居(小学校校区内)
・平成30年 長男が、母及び長女が寝たのを見計らって自転車で父方に向かい、以後、父方で生活
・同年 母が長男及び長女の監護者指定と長男の引渡しの審判と審判前の保全処分申立て、審判移行

原審判断(大阪家審平31.1.11。監護者はいずれも母)

・別居前の主たる監護者は母、父の監護への関与は、休日を中心とする限定的なもの
・別居前の母の監護状況に大きな問題はない
・長男及び長女はいずれも小学校5年生であり、(中略)特段の事情がない限り、母を監護者と指定することが相当
・長女については、(中略)監護者を母とするのが相当
・長男についてみると、(中略)長男が相手方に自ら転居したのは、(中略)今後の生活について熟慮した結果の行動とはいえない
・また、相手方の単独監護の経験は極めて乏しく、(中略)長男の身の回りの監護をほとんど父方祖母に任せており、その依存度は非常に高い
・(中略)
・未成年者らの監護者をいずれも母と指定し、長男について母に引き渡すことが相当

抗告審判断

・母は、本件別居までは長男の主たる監護者であり、その監護状況にも特段の問題はなく、今後、長男を監護する監護態勢も整っているといえる
・他方、長男が父宅に戻った後の、父による長男の監護状況にも特段の問題はなく、監護補助者である父方祖母は、77歳と高齢ではあるが健康であって、今後も監護補助を続けられる見込みである
・長男は、本件別居前から父との父子関係が良好であり、父との同居の継続を強く求めている。他方、長男は、母に対する不信感等もあり、母との同居を拒んでいる(母との面会交流にも消極的である)
・長男と長女は、いずれも小学校6年生(11歳)であり、未成年者らの兄妹関係は既に良好に形成されている。また、父宅と母宅は、いずれも未成年者らが通う小学校の校区内にあり、相互の距離も近く、長男と長女は自由に交流することができる
・以上の長男の従前の監護状況、今後の監護態勢、長男と当事者双方との心理的結びつき、長男の心情等を総合すると、父において未成年者を監護する方が、長男の心理的安定が保たれ、その健全な成長に資し、長男の福祉に適うものと認められる。また、長男は、母に引き取られることを強く拒んでおり、従前と同様、自ら父宅に戻る可能性が高いから、母を長男の監護者に指定し、その引渡しを命ずることは相当ではない

結論

父を長男の監護者と指定、母の子の引渡しに係る申立てを却下

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