調停条項記載の「学費」の解釈につき、和解成立の経緯等から当事者の意思を探求するとし、調停成立後の大学進学のための塾等の費用のうち、高額な費用の支出であると判断した事例(東京地判令和4年1月12日)

学費と記載された封筒と現金 婚姻費用・養育費

事案概要

平成31年3月  婚姻費用分担調停において、本件調停条項成立
 1項 夫が、妻と当時私立高校1年生(医学部志望)の長男の婚姻費用として月11万円を支払う。
 4項 夫が妻に対し、学資保険の満期保険金を長男の学費に充当することを約束する。
平成29年6月~令和3年12月  妻が長男に関する費用300万円を支出

妻が上記300万円について、本件調停条項4項により夫が負担すべきであったのに自分が負担したとして、不当利得に基づき返還を求めた。

争点は、妻が支出した長男に関する費用が、本件調停条項4項の「学費」に当たるかである。

判断

判断枠組み

調停条項の解釈に当たっては、和解の成立に至った経緯、条項全体の趣旨、条項成立の目的、成立に至る経緯等の事情を考慮して当事者の客観的な真意を探求すべきである。

検討

・調停期日では、長男の私立高校の費用、塾代、将来の進学費用の負担方法について争いがあった。
・本件調停条項1項(毎月の婚姻費用分担金)については、長男が私立高校に進学している前提で合意されている。
・本件調停成立前の費用を解約返戻金の学費に充てる旨の明確な合意はなく、本件調停条項4項の「学費」は、調停成立以降の学費を意味する。
・学費の費目について、長男は医学部への進学を希望し、医学部の学費として多額の費用を要することは予定されていたから、本件調停条項4項の「学費」は、将来の大学の進学費用のほか、塾や予備校代などのうち高額(10万円以上)な費用を意味すると解するのが相当である。
・原告の請求のうち、約272万円につき「学費」に当たるとして認容。

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