18年間性交渉がなく、妻が外で深酒をして警察に保護されたり夫が過去に不貞行為をしたこと等があったとしても、婚姻関係が破綻していたとはいえないとした事例(東京地判令3.10.29)

壊れた夫婦関係 不貞行為

事案概要

・平成13年 妻(原告)と被告1(夫)が婚姻。子はない。
・平成14年 妻が夫に対し、性行為が苦痛であり、子を設けたいなら離婚して他の女性との子を授かることも考えられると伝え、以後平成28年まで性交渉なし
・平成29年12月頃 夫と被告2が性交渉
・平成30年12月頃 妻と夫が別居開始  
・平成31年 被告2が夫の子を出産

妻が夫及び被告2に対し、不貞行為により婚姻共同生活の平穏が害されたとして、連帯して約524万円を支払うよう求めた事案。
夫は、不貞行為開始時期には婚姻関係が既に破綻していた、被告2は、夫婦関係が破綻していると信じた等主張。

判断(積極:慰謝料200万円、探偵費用:0円、弁護費用20万円)

婚姻関係の悪化をうかがわせる事実

① 妻は婚姻1年後、性行為が苦痛である、夫は離婚して別の女性との子を授かることも考えられる等述べ、以後平成28年まで性交渉なし
② 妻の職場では接待が多く、妻が深酒をし、警察に保護されることもあった
⓷ 妻が先に帰宅し、玄関扉にドアチェーン等をかけて寝てしまい、夫が入室できなかったことがある
④ 平成24年頃、夫が他の女性と不貞行為をした

①ないし⓷は、被告にとって大きな不満・負担を感じさせる事柄であり、④は一般に離婚原因を構成し得るものであり、その当時において夫婦関係が悪化していたとも考え得る事情といえる。

婚姻関係が破綻していないことを推認させる事実

しかし、こうした不満が夫に蓄積され、不貞行為が一度されたとしても、妻と夫の両者において婚姻関係を継続する意思が失われるものとは直ちに評価し難い。

加えて、
⑤ 平成30年8月以前は自宅で同居していた
⑥ 同居中の生活費は、婚姻時以来、互いに出費をしてきた
⑦ 別居までの間、妻と夫は2人で又は友人等と共にゴルフ、マラソン等に参加し、年に数回は旅行し、誕生日等の記念日に贈答をし合っていた
⑧ 「離婚だ」という発言はあったが、離婚を決意して離婚の条件を協議したことはなかった

上記事実によれば、妻と夫は夫婦として同居し、互いに協力し扶助している(民法752条)という外形がある。
また、一緒に旅行その他の外出・スポーツその他の行動を共にする等、(中略)共同生活を継続する意思があったともうかがわれる。

結論

婚姻の実態が形骸化しているとも、双方が婚姻関係を継続する意思が失われているとも、評価することは困難であり、平成29年12月頃までに婚姻関係が破綻していたということはできない。

その他:損害額

婚姻生活16年弱、不貞行為により子を設けた、子のない夫婦関係であったところに他人との子を設けた事実を知った妻は大きな精神的苦痛を受けた、夫は子の存在が妻には発覚するのを避けるためこの出生後に妻と夫の戸籍の本籍地を転籍 → 慰謝料200万円

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