深夜から未明にかけて停車中の車両内に長時間こもる等の間接事実から不貞行為を推認することはできないとした事例(東京地判令1.12.3)

崩れた積み木 不貞行為

事案概要

・昭和60年婚姻
・平成27年 妻(原告)が探偵に夫の行動追跡調査依頼
・平成29年 妻が離婚調停等申し立てるも不成立

妻が被告に対し、夫と不貞行為に及んだとして、不法行為に基づき880万円(慰謝料800万円、弁護士費用80万円)等の支払いを求めた

判断

車内での長時間の滞在行動が持つ推認力の検討

・被告は、平成27年10月24日午後4時半頃から翌25日午前2時頃まで約9時間半にわたり、夫と2人で外出して過ごし、このうち午後9時頃以降の約4時間半は、途中で一度近所のコンビニエンスストアに移動した場面を除き、本件駐車スペースに停車した車の中に長時間こもり続けるという、一見すると相当に不審な行動に及んでいる

・しかし、車内での滞在状況を終始監視し続けていた探偵業者の調査報告書によっても、車内で何が行われていたのかまでは不明であり、車内で人影が不自然な動きを見せたり、車体が不自然に揺れ動いたりするような状況が現認されたことを示す記録も存在しない
・一方、本件駐車スペースは、片側一車線の道路沿いに位置し、すぐ脇を車が通過していく車道に近い場所であること、周囲には街灯が等間隔で多数設置されており、深夜でも相応の明るさを保持していた
・周辺は土手となっていて、夜間でも人や自動車の通行があった
・たとえ深夜であっても、人目に付きにくい環境であるとは言い難く、通行車両や通行人に目撃されないように車内での性行為を敢行するために適した場所であるとは必ずしもいえない
・被告と夫が当時67歳又は68歳に達していた初老の男女である

これらを併せ考えると、深夜の時間帯であるとはいえ、2人が敢えて人目に触れる可能性のある車道脇に駐車した狭い車の中での性行為を実行するという大胆不敵かつ破廉恥な性的行動に及んだものとは、一般論としても想像しにくい

2人が深夜に長時間密室の車内で滞在し続けていたとの外形的事実をもって、車内での不貞行為の存在を推認するには不十分である

その他間接事実

夫の車のトランクに毛布が積まれていた

単にその一事をもって車内での不貞行為を推認するには不十分

車内のダッシュボード等に使用済みティッシュが捨てられていた

問題の10月24日時点で撮影されたものではなく、精液の付着も不明

被告の夫に対する送信メール

2人が不貞関係にまで至っていたことを直接窺わせる内容のものは存在しない

被告と夫の不貞行為を自認する発言

「不貞行為」は法的概念であり、一般人が「不貞行為」は性行為(セックス)に限らず、配偶者を持つ異性とのキスなどの身体的接触行為や、2人きりで夜に会うなどの行動も広く含むとの誤解に陥っていたとの説明(被告)もあながち不自然とまではいいきれない

クレジットカードの利用履歴

ホテルの利用履歴があるが、宿泊利用の場合少なくとも1室2万円以上であるにもかかわらず、クレジットカード利用金額は1万円のみであり、宿泊した事実は認定できない

カラオケルームのレシート

互いにカラオケが好きな被告と元夫が複数回カラオケルームに数時間滞在していたことをもって、不貞関係の推認に結びつけるのは無理がある

判断

被告と元夫が相当に親密な交際関係にあったという事実を超えて、不貞行為の存在まで認めるに足りる証拠はない

請求棄却

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