中小企業退職金共済法に基づく退職金、企業年金基金規約に基づく遺族給付金・遺族一時金につき、いずれも加入者の死亡当時、その配偶者が事実上の離婚状態にある場合には受給権者に当たらないとした事例(東京地判令4.1.26)

数珠と花 未分類

事案概要

・夫と亡妻は、昭和63年に婚姻し、平成元年に長子をもうけたが、平成4年に別居し、平成26年に亡妻が死亡した。
・亡Bは、中小企業退職金共済事業の被共済者、企業年金基金の加入者であり、死亡による中小企業退職金共済法所定の退職金額は約928万円、企業年金基金からの遺族給付金は約503万円、遺族一時金は約243万円であった。
・上記退職金、遺族給付金、遺族一時金のいずれにおいても、被共済者ないし加入者が死亡した場合には、配偶者がその支給を受ける第1順位の遺族とされていた。
・夫が中小企業共済事業を運営する独立行政法人及び企業年金基金を被告とし、上記退職金等を自己に支払うよう求めて訴訟提起した。

判断

退職金・遺族給付金・遺族一時金のいずれについても、民法上の配偶者は、その婚姻関係が実態を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合、すなわち、事実上の離婚状態にある場合には、その支給を受けるべき配偶者には当たらない。

本件において、①別居期間は20年以上に及び、同居期間は約4年間、②別居期間中、夫と亡妻が面会したのは数回のみ、③夫と亡妻との間で別居解消に向けた話は一切出ておらず、婚姻関係修復に向けた具体的な行動はなかった、④夫は他の女性と内縁関係にあり、亡妻の婚姻費用はほとんど分担しておらず、亡妻の葬儀に参加していない、⑤亡Bは離婚意思はあったものの病状進行により離婚協議届を作成できず、危急時遺言の方式により夫を推定相続人から廃除したとの事実からすれば、婚姻関係は実態を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みがなく、事実上の離婚状態にあった。
よって、夫は、退職金等の支給を受けるべき配偶者に該当しない。

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