①年金収入を、事業収入または給与収入にそれぞれ換算する方法を示すとともに、②婚姻費用分担の始期につき、調停外で婚姻費用を請求した意思表示の時期とした事例(東京高決令4.3.17)

婚姻費用・養育費

1 事案概要   

妻が別居中の夫に対し、婚姻費用の支払いを請求した事案。
夫の収入は、別居後しばらくは年金収入と自営業(以下「期間A」)だったが、廃業した後は年金収入のみ(以下「期間B」)であった。
また、妻は、別居から十数日後に、婚姻費用を請求する手紙を夫に送り、別居から約9か月後に婚姻費用調停を申し立てた。

2 判断

1 年金収入と事業収入がある場合の、年金の事業収入への換算方法(期間A)

年金収入を事業収入に換算するに当たり、事業収入は既に職業費に相当する費用が控除されているので修正計算は不要であり、事業収入と年金収入をそのまま合算した金額が、事業収入に換算した金額となる。

2 年金収入を給与収入に換算する方法(期間B)

年金収入については、給与収入と異なり、職業費の支出を考慮する必要がないため、年金額を(1ー職業費の割合)で割ることにより、給与収入に換算する(職業費の割合は、統計資料に基づく推計値として15%とした)。

3 婚姻費用分担の始期

①妻は別居当時から無職で、収入は少額の年金収入のみであり、婚姻費用の支払いによる扶助を要する状態だったこと、②調停外であっても妻から婚姻費用を請求する確定した意思表示があった場合には、夫もその時点からの支払い義務を負うことは予期すべきで、その時点からの支払いを命じても当事者間の公平を欠くとはいえないことから、請求があった時点を婚姻費用分担の始期とした。

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