別居直前まで表面上は平穏な生活を送っており、別居から約1年後に不貞行為がされたとしてもその時点で婚姻関係は破綻していなかったとして、慰謝料100万円を認定した事例(東京地判令1.5.16)

不仲な男女 不貞行為

事案概要

・平成11年 婚姻
・平成28年2月 妻(原告)と夫が宮古島へ4泊5日の旅行
・同年4月24日 妻と夫が2人で買い物に行く
・同年4月28日 夫が自宅を出て妻(原告)と別居
・同年6月 不貞相手(被告)が夫の新居近くに転居
・同年夏頃 夫が離婚調停申立て(不成立)
・平成29年1月 妻が婚姻費用分担調停申立て(同年4月成立)
・同年4月頃 夫と不貞相手(被告)が遅くとも男女の関係になる
・同年6月 妻が探偵を依頼し夫の不貞行為を知る

妻が夫の不貞相手に対し、慰謝料等440万円等の支払いを求めた

判断1 婚姻関係破綻時期

婚姻関係破綻時期:別居時に破綻していたか

・妻と夫は、別居に至るまで、少なくとも表面上は平穏な生活を送っていた
・また、妻と夫は、平成28年2月に4泊5日で宮古島へ旅行に行くなど、同月まで月に1回は温泉に行き、年に1回は長い旅行に行き、また、週末には1週間分の食料品や日用雑貨の買い物に出かけており、別居直前の同年4月24日にも買い物に行っていた
・他に妻と夫との婚姻関係が別居時に破綻していたことを示す事情も認められない
・(よって)妻と夫との婚姻関係が別居時に破綻していたと認めることはできない

婚姻関係破綻時期:平成29年4月頃に破綻していたか

判断:婚姻関係は破綻していなかった

・別居から同月まで1年程度の期間しか経過しておらず、その間に妻と夫との婚姻関係が破綻したことをうかがわせる特段の事情も認められないから、不貞相手(被告)と夫Aが男女関係になった時点において、妻と夫との婚姻関係が破綻していたとまで認めることはできない

被告の反論

・不貞相手(被告)は、①夫が別居後に妻と面会して話合いの場を設けようとしたが、妻がこれを拒否したこと、②妻が別居後に夫に断ることなく自宅の鍵を取り換え、夫が家に入れなくしたことは、妻が夫と婚姻を継続する意向がないことを示すものであると主張する

・しかしながら、①の根拠となるのは妻のメールであるが、それらは専ら不貞相手(被告)との話合いに関して方法、立会人の有無、話し合うべき内容等を述べるものであって、その内容から妻が夫と婚姻を継続する意向がないことがうかがわれるものではない
・(②について)確かに、妻は別居後自宅の鍵を取り換えているが、妻は、その理由について、女性の一人暮らしで怖く,また,夫が自由に出入りしたり荷物を持ち出したりすることを恐れたためであると供述しており、その供述が不自然であるということはできないから、妻が別居後自宅の鍵を取り換えたからといって、妻が夫と婚姻を継続する意向がないことがうかがわれるものではない

・被告の主張は採用することができない

判断2 損害額

・妻と夫との婚姻関係が別居まで17年に及んでいる
・不貞相手(被告)と夫の不貞行為が一因となって妻と夫との婚姻関係が破綻した
・他方において、不貞相手(被告)と夫が男女関係になったと認められる時期は、既に妻と夫が別居し、別居期間も1年程度経過した後のことであり、その時点では妻と夫との関係が相当程度悪化していたと解される
・妻は適応障害になっているが、それは専ら夫の別居に起因するものであることが認められ、その別居に不貞相手(被告)が関係したことを認めるに足りる証拠はない
・不貞相手(被告)と夫は現在も男女関係を続けているが、妻は(探偵の)調査報告書によって夫と不貞相手(被告)の不貞行為を知った平成29年6月28日に妻と夫との婚姻関係が破綻したと主張しているのであり、その後も不貞相手(被告)と夫が男女関係を継続していることを過大に評価することはできない
・慰謝料は100万円が相当

結論

慰謝料100万円、弁護士費用10万円、計110万円

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