配偶者の一方と不貞関係にあった者が不貞慰謝料を支払い、当該一方配偶者に求償権を行使した場合に、当該一方配偶者が既に慰謝料を払っていたことから求償は認められないとした事例(東京地判令2.12.24

お金を奪い合う男女 不貞行為

事案概要

・平成29年1月 被告(一方配偶者)がAと婚姻
・同年2月~11月 原告(不貞相手)が一被告との間で継続的に不貞行為(「本件不貞行為」)
・平成31年1月4日 被告がAに対し、念書(※1)に基づき680万円支払い
・同月23日 被告とAが離婚
・同年2月 原告がAに対し、合意書(※2)に基づき本件不貞行為に係る損害賠償金として100万円支払い

※1 「甲(被告)が乙(A)との入籍後、反復継続的な不貞行為(相手:2名、期間:2017年2月~2018年3月、回数:30回)を行い、夫婦の平穏を侵害し、乙に対して精神的・身体的苦痛を与えたことを認める」、「離婚慰謝料として金680万円を支払うことを約した」

※2 「原告は、Aに対し、平成29年2月頃から同年12月頃まで、被告と不倫関係にあったこと、及びかかる原告の行為によりAと被告の婚姻関係を破綻させ離婚に至らしめたことを認める」、「原告は、Aに対し、前記の不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料金100万円の支払い義務があることを認める。」

原告が被告に対し、被告の元配偶者であるAに100万円を支払ったことにより、被告に対する80万円の求償権請求権を取得したと主張して、80万円等の支払いを求めた事案。

判断

1 原告と被告はいずれも、同様の趣旨でAに金員を支払った

・原告は、本件不貞行為によってAが被った精神的苦痛に対する慰謝料として、いわゆる離婚慰謝料に相当する分も含めて、Aに対して100万円を支払ったものと認められる(合意書)
・被告も原告の支払いに先立ち、原告が支払ったのと同様の趣旨、内容の慰謝料として612万円の支払いをした(同金員に財産分与に相当する部分や早期に離婚するための対価が含まれているとは認められない)
・そうすると、被告が上記支払いによる免責の効果を原告に対抗できる場合には、仮に原告と被告がAに対して共同して支払い義務を負うべき慰謝料額における原告の負担割合が2割であるとしても、上記慰謝料の金額に関わらず、原告がその負担割合を超えて支払いをしたものとは認められない

2 民法443条1項の事前通知なし、信義則違反なし

・本件不貞行為に係る損害賠償債務は不真正連帯債務であり、民法443条の適用ないし類推適用については疑義があるが、この点をおくとしても、原告から被告に対し同条1項の事前通知がされたとは認められない
・原告と被告は職場の同僚であることに加え、原告は、弁済前既に弁護士に委任をしていたこと等からすると、原告において手段を尽くしたにもかかわらず被告に対する事前通知ができなかったものとは認められない
・したがって、仮に民法443条が適用ないし類推適用されたとしても、同条2項によって原告は自身の支払いによる免責の効果を被告に対抗できず、被告による免責の主張が信義則に反するともいえない

・原告の請求は理由がない

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