①特に理由もなく別居を開始したものの別居期間が8年に及ぶ場合に、離婚請求が信義則に反するとまでは言い難い、②離婚認容判決における財産分与として、夫婦が同居中に飼育していた犬につき、公平の観点から持ち分割合を定め、その割合で飼育費用を負担すべきとして定期金の支払いを命じた事例(福岡家裁久留米支部判令2.9.24)

財産分与

1 事案概要

夫婦は婚姻後15年以上共同生活を続けていたが、夫は特に理由もなく自宅を出て別居を開始した。
夫は別居期間中、妻の自宅家賃や水道光熱費等を負担して経済的に支援した。
夫には定職があり、持ち家も有しているのに対し、妻は無職、借家住まいである。
夫婦は、同居している間、犬3頭を飼っていたが、別居後は、妻が自宅で飼育を続け、夫が餌代を負担していた。

夫が離婚を請求したのに対し、妻は離婚を争うとともに、仮に離婚が認められるとしても、扶養的財産分与として、犬3頭が生存する限り、毎月妻方の家賃相当額が支払われるべきと主張した。

2 判断

① 離婚請求について

別居期間は既に8年を超えており、この点だけからみても婚姻は修復の見込みがなく、既に破綻しているといわざるを得ない(民法770条1項5号)。
夫は、長期にわたる別居期間中、妻方家賃や水道光熱費を負担し続け、経済的に支援していることに鑑みると、夫は特に理由もなく別居を開始したものとはいえ、離婚請求が信義に反するものとまでは言い難い。

② 犬の財産分与について

犬3頭について積極的な財産的価値があるとは認め難いものの、夫婦共同の財産に当たる。
犬3頭については夫婦の共有と定め、持ち分に応じて飼育費用を負担するのが相当である(民法253条1項、649条)。
夫は定職があり持ち家も有しているのに対し、妻は無職、借家住まいであることに照らすと、持ち分割合は、夫2、妻1として同割合で費用を負担するのが実質的公平にかなう。
家賃や餌代が今後も発生し続けることは明らかであるから、人事訴訟法32条2項により、夫に定期金の支払いを命じることが相当である。

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