事案概要
・平成9年 婚姻
・平成22年 夫が不貞行為、平成24年以降は夫と不貞相手が同居
・平成23年 夫婦が別居
・平成24年5月 夫が代理人を通じて妻に対し、同月分の「生活費」(家賃等除く)として30万円を支払うこと、翌月分以降も「生活費」を支払う予定であるが、金額は別途検討する旨通知
・平成26年7月 夫が代理人を通じて妻に対し、現在支払っている婚姻費用月額52万5000円は過大なので同年12月支払分以降、月額40万円とする旨通知
・以後令和元年12月まで毎月、夫が妻への金員の支払いを継続
妻が夫に対し、遅くとも平成24年6月頃までに婚姻費用を月額52万8000円とする合意が成立していたところ、夫が一方的にこれを減額して支払い、また、その後婚姻費用を支払わなくなったとして、確定未払婚姻費用合計約1570万円等を請求した事案。
判断:消極(合意不成立)
・夫が平成24年5月に一定の金額を婚姻費用として支払う提案をし、実際に翌月から平成26年10月支払分まで月額52万8000円を支払っている事実は認められる
もっとも、
・同年7月に減額の通知をし、実際の支払い額も同年11月支払分からは月額40万円に、平成27年5月支払分からは月額35万円に、平成30年1月支払分からは月額30万円に減額された
・減額に対し、妻が異議を唱えたことを認めるに足りる証拠はない
・そうすると、夫が婚姻費用支払いの提案をし、当初月額52万8000円を支払っていることは認められるのの、これは、とりあえず、離婚に向けて、毎月ごとに婚姻費用の支払をしたものであり、原告も、とりあえず、これを受領していたに過ぎないというべきであり、離婚が長期間成立しない場合にも、離婚成立まで月額52万8000円もの婚姻費用を確実に支払うことを約束したものとは認められない(仮に、同額の婚姻費用を支払う約束があり、法的拘束力を有していると当事者が考えていたのであれば、夫による一方的な減額後も妻が異議を唱えていないことの説明が難しい。)
・よって、妻が主張する婚姻費用月額52万8000円とする合意は認められない