元夫が元妻に対し、建物所有権に基づきその明渡を求めた訴訟において、財産分与請求権は分与対象財産の占有権原たり得ないとし、元夫の請求が権利濫用であるということもできないとした事例(東京地判令3.1.28)

戸建て その他

事案概要

・平成6年 婚姻
・平成14年 元夫が本件建物及び敷地を取得
・平成28年 元夫が海外赴任
・平成30年 裁判離婚、元妻は子2人と共に本件建物に居住
・平成31年 元夫が海外赴任を終えて帰国し、本件建物に居住(令和2年以降実家に戻る)

元夫が元妻に対し、元夫が所有し元妻が占有する本件建物の明渡及び離婚判決確定日の翌日から明渡済みまでの本件建物賃料相当損害金の支払いを求めて訴訟提起した事案。
本件訴訟係属時、財産分与の調停手続きが継続中であった。

判断

争点1:本件建物に関する元妻の占有権原

・財産分与請求権は、当事者の協議又は審判によって具体的内容が形成されるまでは、その範囲及び内容は不確定なものであり、分与対象財産の占有権原たり得ない
・また、本件全証拠によっても、元妻が財産分与の対象となる本件建物を離婚後も使用することについて、元夫と元妻の間で使用貸借契約等の何等かの合意がなされた事実は認定できない

争点2:権利濫用

・元妻は、本件建物の近隣にある実家を相続しており、本件建物以外に無償で住む場所がある
・長男は社会人で本件建物を出て独立した生活をしており、二男も1年以内に成人することから、元妻が子らの養育のために本件建物に起居しなければならない理由はない
・元妻は、婚姻前後の給与等の収入、元夫からの婚姻費用、元妻の父の設立した会社からの約2500万円の給与名目の収入等、実家の一部を賃貸していることによる賃料収入(月額40万円)を得ている
・元夫は、現在実家で起居しているものの、長期間居住はできず、通勤も不便である
・元夫は、年間約1230万円の所得金額があるものの、本件の建物及びその敷地のローンや諸経費を全て負担しており、別途居住場所を賃借する経済的余裕はない
・元妻は、離婚成立後海外赴任から戻ってきた元夫を侮辱し、嫌がらせ行為を繰り返した

以上の事実に鑑みれば、財産分与の調停事件が係属中であることを踏まえても、元夫の元妻に対する本件建物の明渡請求や離婚後から本件建物明渡済みまでの賃料相当損害金請求を、権利の濫用ということはできない

争点3:賃料相当損害金の額

7万円

結論

元夫の請求認容

タイトルとURLをコピーしました