出向先会社の代表者が同社の労働者の配偶者と不貞関係になったことにつき、出向元の使用者が使用者責任を負うとした事例(東京地判令和3.6.25)

複数のビル 不貞行為

事案概要

原告は夫、被告会社は夫の出向元会社、被告は、被告会社の執行役員かつ夫の出向先であるA社(被告会社の完全子会社)の代表取締役である。
夫は、被告会社からA社に出向していた。
原告の妻は、夫の出向期間中、被告と不貞関係となった(夫と妻はその後離婚)。
夫が被告に対しては不法行為に基づき、被告会社に対しては使用者責任に基づき、慰謝料等2200万円等の連帯支払いを求めた事案。

判断(積極)

判断枠組み(出向元の使用者の安全配慮義、出向先はその履行補助者)

・使用者は、労働者に対し、安全配慮義務を負う。
・出向先において労働者の労務管理を統括する権限と責任を有する者は、出向元の使用者が負う配慮義務の履行補助者として、当該義務の内容に従ってその職務を遂行すべきである。
・労働者の出向先における労務管理の統括者が当該労働者の配偶者と不貞関係を持つという行為は、当該出向労働者がその就業場所である出向先で労務を提供する過程において、その心の健康に害を被る危険性の高い行為であり、上記配慮の義務に違反する。
・このような行為が行われた場合には、出向元の使用者において、当該労働者に対する上記配慮の義務不履行があったものとしてこれに基づく雇用契約上の責任を負う
・当該行為を行った出向先の労務管理の統括者においても、当該労働者の上記配慮を受ける権利を侵害したものとして、当該労働者に対する不法行為を免れない

本件へのあてはめ

・被告会社は、その執行役員である被告との間に使用関係が認められる
・実質的にみても、自らが雇用する原告(夫)についての労務管理業務を被告に委ねることにより、その事業のために被告を使用していたと評価できる
・被告は、原告(夫)の出向期間中に、原告(夫)の妻であることを知りながらその人物と不貞関係を持ち、これにより、原告(夫)の上記配慮を受ける権利を故意により侵害したから、不法行為責任を負う
・被告の不貞行為は、被告会社から委ねられた労務管理業務(前記配慮の義務履行補助)の執行について行われたものである
・被告会社は、使用者責任に基づき、被告と連帯して、被告の不貞行為により原告が被った精神的苦痛を慰謝すべき義務がある。

その他

慰謝料は300万円と認定された。

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