別居から約3か月後の不貞行為に関し、婚姻関係が修復不可能な程度に破綻していたとまでは認められないとして不法行為の成立を認めた一方、慰謝料額を40万円と認定した事例(東京地判令1.6.14)

親密な男女を後方から見つめる男性 不貞行為

事案概要

・平成26年 婚姻
・平成29年2月28日 妻が自宅を出て夫(原告)と別居開始
・同年6月5日 妻が離婚調停申立て
・同月9日~24日 不貞相手(被告)が妻方に3回宿泊(9日、22日、24日)

夫が不貞相手に対し、妻と不貞行為に及んだとして、慰謝料300万円等の支払いを求めた

判断

不貞開始時期

遅くとも平成29年6月頃において不貞関係にあったと認められる

平成29年6月時点における婚姻関係破綻の有無

積極事情

・妻は、自身への配慮の足りない夫に対し、不満を募らせていた
・夫は、婚活アプリを通じて知り合った人物と連絡を取り合ったり、食事をしたりしていた上、妻の知るところとなって同人物との関係を絶った後も、再び婚活アプリを通じて別の人物と知り合い、同女と連絡を取り合ったり、食事をしたりしていた
・こうしたことから、夫と妻の関係は悪化し、平成27年10月頃には、日常の些細な出来事を切っ掛けとして諍いが度々生じるようになり、夫が妻のスマートフォンを取り上げたり、夫が知人宅に宿泊したりするなどの事態に発展することもあった
・妻は、夫に対する不満や不信を増幅させていき、平成28年12月の比較的大きな喧嘩をきっかけに、離婚する決意を固めた
・妻は、夫に気付かれないようにして別居の準備を進め、平成29年2月28日に別居を開始した
・別居から約3か月後に妻から離婚調停が申し立てられた

・これらに照らせば、同年6月の時点において、夫と妻の婚姻関係は破綻の危機に瀕していた

消極事情

・妻は夫に対して事前の告知等なく一方的に別居を開始した
・別居に至るまでに、夫と妻との間で、別居や離婚を含めた2人の今後の関係につき、真摯な話合いの機会が持たれた形跡はない
・離婚調停の申立ては、別居開始から3か月余りしか経過していない時期になされた
・夫は、調停申立て以前のやり取りにおいて、離婚を拒否し、調停においても離婚を争っている上、本件訴訟で実施された本人尋問において、妻に1日も早く戻ってきてもらいたいとの希望を述べ、妻の対応次第で婚姻生活を継続する意思がある旨示している

・すると、妻が離婚調停を申し立てた時点では、婚姻関係が修復可能な程度に破綻していたとまでは認めることはできない

損害額

・婚姻関係は、平成29年6月時点において、修復不可能な程度に破綻していたとまではいえないものの、破綻の危機に瀕していた
・とりわけ、同年2月28日に妻が夫との離婚を決意して別居に至っている
・これらを踏まえると、不貞相手が妻と不貞行為に及んだことにより、夫と妻との婚姻共同生活の平和が侵害された程度は、限定的である
・他方、夫と妻の婚姻関係は、妻と不貞相手との不貞関係、夫と妻との別居の継続、離婚訴訟の係属に加え、妻と不貞相手が親密な交際関係を継続していることが相まって、現時点では破綻に至っているというべきであり、被告の責任も軽視することができない

判断

慰謝料額40万円、弁護士費用4万円

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