仮に肉体関係を持っていなかったとしても、不貞行為とは夫婦関係を破綻に至らせる可能性のある異性との交流、接触であればこれに該当する等として、慰謝料額を250万円と認定した事例(東京地判令1.5.30)

積み木を組み立てたら閃いた 不貞行為

事案概要

・平成27年 婚姻、長女出生
・平成28年12月 不貞相手(被告・昭和39年生まれ・医師)と妻(看護師)が職場で知り合う
・平成29年2月 不貞相手と妻が複数回にわたり本件各メールのやり取り
・同年3月1日 不貞相手と妻が、午後8時50分頃から午後11時頃まで本件部屋で過ごす
・同年5月 夫(原告)と妻が離婚

※本件部屋:集合住宅の一室

夫が不貞相手に対し、不貞行為を行ったとして不法行為に基づく損害賠償500万円等の支払いを求めた

判断

不法行為の有無

・上記(3月1日のこと)のとおり、夜間、不貞相手と妻が本件部屋で会っていたことは認められるが、本件部屋は宿泊を前提とした施設とは認められない。したがって、本件部屋で密会していた事実をもって直ちに不貞相手と妻の肉体関係の存在を推認することはできない

・しかしながら、妻と不貞相手が相当に相当に親密な関係にあったことは、不貞相手が妻の容姿や「ハグ」「ボキボキのエロマッサージ」といった肉体的な接触について言及した本件各メールのやり取りがあること、2人で食事に行ったり、長女も交えて3人でドライブや食事に行っていること、夜間2人きりで本件部屋で密会していたことからも十分に認めることができる

・また、不貞相手と妻は、3月1日、少なくとも2時間、本件部屋で密会している。そして、本件部屋は鍵を不貞相手と病院が管理していたとはいえ、不貞相手が月額3万円で借りていた物件であることからすれば、不貞相手の私的空間であったといえる。さらに、妻は、不貞相手と密会していることについて、夫に告げず、虚偽の説明をしており、妻にとって、不貞相手との密会にやましいところがあったことをうかがわせる

(中略)

・以上からすると、不貞相手と妻は、3月1日に本件部屋で密会し、肉体関係を持ったことを十分に推認できるが、仮に肉体関係を持っていなかったとしても、そもそも不貞行為とは、肉体関係が端的なものであるが、婚姻関係を破綻に至らせる可能性のある異性との交流、接触であれば不貞行為に該当すると解されるところ、不貞相手と妻の本件部屋での密会は充分に不貞行為に該当し得るものといえる

・以上からすれば、不貞相手の妻と本件部屋で密会したことを含めた、一連の行為は、不貞行為に該当する

損害額


・本件において、不貞相手と妻は、本件各メールのような親密なやり取りをし、2人で食事に行ったり、3月1日にはわざわざ不貞相手が妻を車で迎えに行って、2人きりで本件部屋で密会する等、不貞相手と妻の間には肉体関係があったか、仮になかったとしても夫と妻の婚姻関係を破綻に至らせる可能性のある交流、接触を続けたものといわざるを得ない

・また、妻は、3月1日、当時2歳にも満たない子供を一人自宅に置き去りにして、不貞相手と本件部屋で密会している

・さらに、不貞相手は、妻に生後間もない子供がいることを知りながら、夜間、わざわざ妻だけを車で迎えに行って本件部屋で密会していたこと、その際、不貞相手は妻に対し,子供を置いてきて大丈夫なのかといったことを確認もしなかった。その点について原告代理人から問い質されても、子供のことは夫や妻の家庭の問題であって、自分にはわからないことだからといったことを述べている。かかる不貞相手の行動や事実認識は、不貞相手の年齢や社会的地位からして、極めて軽率で自分勝手なものと言わざるを得ない

・諸般の事情を総合的に考慮すれば、慰謝料としては250万円が相当である

結論

慰謝料250万円

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