面会交流の中止を希望する子の意向を踏まえ、親権者が面会交流に関する調停条項を実施しなかったとしても、不法行為を構成しないとした事例(東京地判令3.1.29)

母と子の後ろ姿 面会交流

事案概要

・平成12年 婚姻、長男出生
・平成25年 元夫(被告)及び子が元妻(原告)と同居していた家を出て、元夫の実家で生活
・平成26年3月 
  面会交流調停成立(本件条項1:元妻と未成年者が月2回程度面会、本件条項5:元夫が元妻に対し、子に関し適宜情報提供する)
・同月以降 
  毎月2回程度面会。ただし、元妻は飲酒して一方的に子に話しかけ、子は目を合わせずほぼ話をしないという状況で面会を重ねる
・平成29年3月 裁判離婚成立、子の親権者は元夫
・同年4月 
  元妻が子(当時高校2年生)と面会するも、以後面会なし(子は元妻に対し、次回以降の面会は行いたくない等述べた)
・平成31年・令和元年 元妻が面会交流調停事件・親権者変更調停事件申立て
・同年11月 
  家庭裁判所調査官による調査実施、調査報告書提出(子が母(元妻)に対して強い恐怖心と嫌悪感等を持つようになっていたこと、監護状況に問題は見られないこと等の記載あり)
・令和2年 元妻が本件訴訟提起、同訴訟係属中に子が成人

元妻が、元夫ら(夫の父と姉)に対し、面会交流に係る調停条項の不実施等を続けていることにつき、共同不法行為が成立するとして、連帯して1000万円の慰謝料等の支払いを求めた事案。

判断

判断枠組み等

・平成29年4月を最後に面会が実施されていないなど、形式的には本件条項1等が実施又は履行されないなどの状況が継続している
・しかしながら、面会交流や非監護親への情報提供等につき、両親の間の合意により、調停条項として具体的に内容が定められたとしても、この種の調停条項の権利性は、まずもって子の福祉に資するかどうかという観点から検討されるべきものである(民法766条参照)

あてはめ

認定事実記載の諸事情、特に、元妻(母)の言動等、これら言動等を通じて子が元妻に対して強い嫌悪感等を抱くに至った経緯、本件調停の各調停条項の従前の実施状況、子の年齢と判断能力といった点に照らせば、面会交流の中止等を希望する子の意向を踏まえて元夫らが行動し、その結果として本件調停条項等が実施等されていないとしても、元夫らの作為又は不作為につき、これを個別にみても、全体としてみても、何ら不法行為を構成することはない(民法709条、719条)。

結論

請求棄却

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