同居親である母の、別居親である父に対する感情的反発や心身の不調を理由に父と子らの直接交流を認めなかった原審判を変更し、直接交流を認めた事例(大阪高決令1.11.8)

父と子 面会交流

事案概要

・平成22年~ 婚姻、2子をもうける
・平成23年 別居
・平成27年 夫婦関係調整調停成立(当分の間別居を継続して監護者を母と定めること、父は月1回程度未成年者と面会交流することを合意(「本件実施要領」)
・平成30年5月 母(相手方)が心療内科の通院開始、父(申立人)の交際女性と対面、この頃から面会交流が実施されなくなる
・同年8月~ 父が面会交流調停申立てるも不成立、本件審判手続きに移行

原審が、本件実施要領を変更し、間接交流のみを認めたことに対し、父が即時抗告した

原審(神戸家審令1.7.19)(抜粋)

・面会交流が実施されなくなった直接の原因は、(中略)母が診療内科に通うようになり、父が母の自宅を頻繁に訪れていた矢先に、母が突き止めた父の居所で父の交際女性と対面し、父と母の関係が悪化したことにある
・父と母は、婚姻当初に父の女性問題が原因で別居し、再同居して二女が出生した後も、女性問題が原因で再び別居し、(中略)婚姻関係は悪化していた
・しかしながら、(中略)関係修復の兆しがあるように見える中、(中略)母が突き止めた父の居所で交際相手女性と対面したことは母に大きなショックを与えることとなり、母は、心身の不調から日常生活に支障が生じてけがをし、部屋の隅で泣くなどして、その様子を見た未成年者らが母を気遣う事態となった
・未成年者らは、父を慕う気持ちはあるが、(中略)父と面会交流することは、母を悲しませることになると案じている
・母は、(中略)主治医から、心身の不調をきたす原因となる父との接触を避けることが望ましいと判断されたことを併せ考慮すると、当面は父と未成年者らとの面会交流を実施することは相当ではない
・そうすると、間接交流をするのが相当である

本件審判

直接交流を認めるべきこと

・父と未成年者らの従前の父子関係は良好であり、平成30年6月末ころまでは、宿泊はもとより2回にわたり家族で一緒に旅行に出かけるなど、本件実施要領に捉われずに柔軟かつ円滑に父と未成年者らの直接交流が行われていた
・その際、父が未成年者らに対して不適切な言動に及んだことも窺われない
・未成年者らは、現在も父を慕い、直接交流の再開を望んでいる
・このような事情を考慮すると、直接交流を禁止すべき事由は見当たらない
・長女は、父に会いたいと思う一方、母の心中を慮って会うことを躊躇するという忠誠葛藤に陥っており、この状態が続けば、長女に過度の精神的負担を強いることになる
・したがって、直接交流を速やかに再開することが未成年者らの子の福祉に適うと認めるのが相当

母の心身の不調

・母は、平成30年9月には復職できるまでに回復しているのであるから、直接交流に応じることによって健康状態が悪化し、未成年者らの監護に支障をきたしたり、未成年者らに不安を与えたりする状態に至るとは考えられない
・母は、父との接触を避けることが望ましいとされているが、未成年者らの年齢(9歳、6歳)や発達状況からすると、当事者のいずれかの目が届く範囲の短距離であれば、受渡場所まで未成年者らだけで歩いて行くことは可能であるから、母と父が直接対面することなく未成年者らの受渡しができないわけではない
・相手方の心身の不調は、直接交流を禁止、制限すべき事由にはならない

面会交流実施要領

母の相手方に対する感情的反発が強い現状では、当事者間で事前に面会交流の内容を協議することは困難であるから、本件実施要領を変更し、面会交流の内容を具体的に定める必要がある
(本件審判において、面会交流の頻度、日時、時間、受渡場所・方法等につき、具体的に定められた)

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