妻から被告女性に対する不貞慰謝料請求訴訟において、メールのやりとりや夫が所持していたホテル利用明細書等からは不貞関係は認定できないとした事例(東京地判令3.1.27)

スマホとハートマーク 不貞行為

事案概要

・平成18年 婚姻
・平成25年 夫が妻(原告)に離婚申し出
・平成26年 妻が自宅でホテルの本件利用明細書発見
・平成27年 妻が夫と被告との間の本件メールのやり取り確認
・平成28年 夫が海外出張に行った後、妻が居住する自宅へ戻らなくなった
・平成29年 夫が妻に対し履行調停申立て、不成立により終了
・平成31年 夫が妻に対し離婚訴訟提起・夫婦を離婚する旨の判決、妻が控訴提起
・令和2年 妻が自宅で夫の本件手帳発見

妻が、夫の入社同期である被告女性(既婚、二子あり)に対し、平成24年頃から夫と不貞関係にあったとして、不貞慰謝料500万円等の支払いを求めた。

判断

メール

・本件メールは、平成26年10月21日~同年12月31日までに夫・被告間で送受信されたもので、以下のことが認められる
・10月21日:同日に被告と夫が会う約束をしていたこと、「愛情」との語も用いながら親密な内容のメールを交換していること
・11月16日:被告と夫が親密な内容のメールのやりとりをした上で、渋谷で会う約束をしていたこと
・12月17日:被告と夫が予め待ち合わせをした上で、有楽町で会っていたこと
・同月20日、27日:被告と夫は、「心から愛しあって」、「愛おしく思っている」などの語を用いながら非常に親密な内容のメールを交換していること
・同月29日:同日に会いたかったと、被告と夫が互いに思っていたこと
・同月31日:被告と夫が、アメフトの試合を見に行く約束をしていたこと

しかしながら、これらを併せても、被告と夫が、非常に親密な関係にあり、また、会うことがあったことは認められるものの、それを超えて不貞行為を行っていたことまで推認できるとはいえない

本件利用明細書、本件手帳

・本件利用明細書は、「ホテル△△ 渋谷店」のもので、平成26年12月2日19時41分から翌3日1時41分まで、同ホテルを利用した旨の記載あり
・本件手帳には、平成26年ないし平成27年のメモとして、「12/17(水) 有楽町 韓国¥4000」、「5/29 3800ホ渋」等記載されている

・しかしながら、本件利用明細書には、ホテルの利用日時が記載されているにすぎず、これをもって、夫が被告とともにホテルを利用したと認めることはできない
・本件手帳には、「ホ渋」、「国分」、「国分泊」との記載があり、夫が、渋谷のホテルを利用したことや、当時被告が住んでいた国分寺を訪れたり、国分寺に宿泊したりしたことは窺われるものの、そのことから被告と夫が不貞行為に及んだと推認するのは、飛躍がある

結論(請求棄却)

・被告と夫との間に不貞行為があったと認めるに足りる証拠はない
・また、被告と夫が非常に親密な関係にあったことをもって、不法行為に当たると解することが相当ともいえない
・なお、被告の本件メールの趣旨に関する供述は、いずれも不自然不合理であって、到底採用できない。しかしながら、被告が、夫との関係について、不自然不合理な主張及び供述をするからといって、被告と夫が不貞行為を行っていたと推認できるものではない

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