内縁の成否につき、共同生活の実態は認めつつ、婚姻意思は認定できないとして、内縁が成立していたとは認められないとした事例(東京地判令和3.3.9)

内縁関係 内縁関係

事案概要

・平成21年 交際開始、2度の別れと復縁
・平成23年 3度目の交際開始
・平成24年12月 男性(被告)が賃借するマンションで同居
・平成25年11月 男性が新築マンション(以下「本件マンション」)を自己単独名義で購入し、女性(原告)と共に転居
・平成26年10月 男性が訴外女性と性的行為、妊娠させる
・平成28年12月 女性が本件マンションから退去(同居生活約4年間)

女性が男性に対し、当時内縁関係にあった男性の不貞行為が原因となって内縁関係が破綻したとして、慰謝料1000万円等の支払いを求めた事案。

判断

内縁の成否の判断基準

・内縁とは、婚姻の届出をしていないため、法律上は夫婦と認められないが、事実上夫婦同然の生活をする男女関係のことをいう
・内縁の成否は、当事者間に社会通念上の夫婦と認められる関係を形成する意思があるか(婚姻意思)と、社会的実体として夫婦同然の共同生活を営んでいるか(共同生活)の要件の具備の有無により判断する
・婚姻意思の存否は、当事者双方の主観的認識のほか、当事者の職業・年齢・経歴・社会的地位、結婚の慣習上の儀式の有無、共同生活の経緯・内容・生活状態、共同生活の継続期間、第三者の男女関係に対する認識等の外形的事情も総合考慮した上で判断する

婚約の有無

判断枠組み

・婚約は、将来において婚姻関係に入ろうとする男女間の合意であり、共同生活が不可欠な内縁とは異なる法的概念であるが、婚約が成立した男女間には、誠実に将来婚姻する約束が存在することに照らすと、少なくとも確定的な婚姻意思を形成する前段階までは到達しているという見方が可能である
・このように考えると、婚約の有無は、内縁の成否の判断の基礎となる重要な事実関係といえる

あてはめ

・平成24年11月、男性は女性に指輪を贈呈した
・男性は婚約の証として指輪を贈った経緯を対外的に自認、3度目の交際期間も指輪を渡した時点で1年以上に及び、翌月からは同居生活を始める段取りが既に固まっていた等の事情あり
→ 指輪を交付した時点で婚約が成立していた

共同生活の有無

・婚約の翌月に同居を開始した1年後に、2人で結婚生活を送ることも念頭に置きつつ、男性名義で購入した本件マンションに移り住み、約3年間にわたり同居生活を継続していた
・対外的には、男性の家族からの新居のお祝いに共同で対応する等男性と女性が共同で対外的な付き合いに応じていた
・訴外女性問題への共同対処の状況
→ 家計管理状況の面では共通の財布を作っていなかった等の事情を勘案しても、共同生活の実態が相当程度存在していた

婚姻意思の有無

判断枠組み

・当事者の認識がいまだ婚約の域を出ない場合と、これを超えて社会通念上の夫婦と認められる関係となることを共に希望する段階に達していた場合とは区別して考える必要がある
・入籍まではしていないものの、既に社会生活上の夫婦と認められる関係を形成する意思が当事者双方に確立されていたと客観的に認められるか否かによって判断すべきである

あてはめ

消極方向に作用する判断要素

・婚姻に向けた儀礼的行事等の不存在:女性は婚約後も母に対し、男性を結婚相手として紹介しなかった、婚姻に向けた具体的な準備を進める行動をしていなかった、結納や婚約祝いの食事会、新居に転居したことを報告する挨拶状等婚約に関連する対外的な儀礼行為が存在した形跡は見受けられない

・保険の名義:男性は、本件マンションの住宅ローンの手続きを進める過程で、三大疾病に罹患して稼働不能となった場合に備えた保険に加入し、その死亡保険金等受取人として自身の母を指定した

・男女間のメールのやり取り:平成25年10月から平成26年9月にかけて、何度もやり取りがされた一連の長文のメールの内容に鑑みれば、2人が結婚に進むべきかどうかを真剣に考えて、互いの意見や価値観をぶつけ合いながら継続的に話し合いの場を設けていたことが窺われる

・主治医に対する男性の立場の説明:女性はうつ病の治療のため通院していた先の主治医に対し、男性のことを「彼」「彼氏」と説明していた

・婚姻届不提出の理由に関する女性の説明:籍を入れるかどうかにこだわりはなく、子どもが生まれれば籍を入れることになるのではないかと思い、男性も同じ考えを持っていたと思うとするが、男性が女性との結婚に本当に進むべきか真剣に思い悩んでいたことは明らかで、2人の間ではまさに入籍をするかどうかが将来の関係を決する重大な問題となっていたことを十分に認識していたはずである

→ 平成24年12月から平成25年10月までの間に、少なくとも男性の認識として、女性とは当初予定していた入籍はしていないけれども、既に女性との間で社会通念上の夫婦と認められる関係を形成する意思を確立していたとまで認定するのは躊躇される。その後平成26年10月頃までの間に、少なくとも男性の認識に大きな変化が生じて、かかる意思を確立するようになっていったとまで認定するのも躊躇される。

結論

平成26年10月頃の時点で、原告(女性)と被告(男性)の双方に確たる婚姻意思が存在していたとまでは認めがたく、内縁が成立していたとは認められないから、男性が女性に対する貞操義務を負っていたとはいえず、訴外女性との性行為に及んだとしても、貞操権侵害及び内縁関係破綻を理由とする不法行為は成立しない。

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