婚姻前に夫婦の一方が単独で所有していた建物につき、別居後に発生した賃料収入は、単独所有していた者が全て取得できるとした事例(東京地判令3.2.17)

高層マンション 財産分与

事案概要

・平成12年 被告が本件建物を購入し、被告単独名義で所有権保存登記、賃貸に出す
・平成15年 婚姻
・平成25年 別居
・平成28年 本件建物売却(本件建物の住宅ローンは別居前に完済)
・平成31年 裁判離婚(本件建物の約32%を被告の特有財産部分とした。以下「別件訴訟」)

原告が被告に対し、別居日から本件建物売却日までの賃料のうち、34%((100ー32)×0.5)は原告が取得できると主張して、不当利得に基づき約181万円及び遅延損害金の支払いを求めた事案。

判断(消極)

・本件建物は、被告が原告との婚姻前に単独で購入し、単独名義の登記を経たものであるから、被告は、婚姻時点において、本件建物を単独で所有していた。そのため、所有関係がその後変動するなどの事情がない限り、被告は、本件建物の賃料を全て得ることができる

・離婚によって生じることのあるべき財産分与請求権は、当事者の協議又は審判等によって具体的内容が形成されるまでは、その範囲及び内容が不確定なものと解される(最判昭55.7.11)

・そうすると、婚姻中の夫婦の一方は、夫婦共有財産について、その清算をするに際して当事者間で協議がされるなど、具体的な権利内容が形成されない限り、相手方に主張することのできる具体的な権利を有しているものではない

・したがって、別件訴訟の判決において、本件建物について共有部分が判断され、被告の原告に対する財産分与請求権が認められ(原文ママ)、同判決が確定したからと言って、同判決確定前に、原告が、被告が単独所有している本件建物について、100分の34の割合による持分権を取得したと解することはできないし、原告が本件賃料の同割合に相当する金額を取得できるようになったと解することもできない

・仮に原告が、婚姻期間中、本件建物についての被告を借主とする住宅ローンの弁済に寄与していたとしても、それによって、当然に原告が、被告が単独所有している本件建物について、100分の34の割合による持分権を取得したと解することはできない

・婚姻期間中、本件建物の所有関係が変動するなど、原告が本件賃料の同割合に相当する金額を取得できるようになったと判断するに足りる事情は認められない

結論

請求棄却

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