難病を患った妻と子らを自宅に残して実家に帰った夫に対し、①離婚慰謝料の額を500万円と認定し、②妻の障害年金の受給は養育費算定に際し考慮しないとした事例(東京家判立川支部令2.3.12)

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事案概要

・平成18年~ 婚姻、2子をもうける
・平成28年 妻(原告)がレーベル病(※)発症、視力障害による障害者手帳取得
・平成29年 夫(被告)が妻子を残して自宅を出て別居
・平成30年 妻が離婚調停申立て、不成立

※ レーベル病:細胞内のミトコンドリアの遺伝的な異常により網膜の一部が壊死する難病で、中心部の視野が欠損し、重大な視力障害となる病気

妻が夫に対し、夫において、難病を発症して中途失明に等しい状態で生活していかなくてはいけなくなった妻と子らを自宅に残したまま、実家に帰ったことなどにより婚姻関係が破綻したとして、離婚及び慰謝料と養育費の支払いを求めた事案

判断1:離婚慰謝料の額

・夫は、難病を発症して中途失明というに等しい大きな障害を抱えて生活していかなければいけなかった妻をしっかり支えていくことができず、(中略)妻と小学生の二人の子どもを自宅に残したまま実家に帰ってしまった
・報酬の振込口座を変更した
・住宅ローンの支払いを停止して妻子が居住している自宅が競売で失われかねない事態を招いた(妻が婚姻費用の中から代わりに住宅ローンを支払っている)
・健康保険を使えないようにした
・(これらのことから夫は)悪意の遺棄をしたというに他ならない
・夫は、別居して暮らす妻子に対しては、自己と同程度の生活を維持させる生活扶助義務があるにもかかわらず、それを放棄し、そうでなくても困難な妻の生活を更に不安定なものとし、妻に大きな精神的打撃を与えた
・夫の妻に対する言動は許されない内容を含む
・本件訴訟に至っても、夫は、きちんと自己の責任に向き合う姿勢がなく、不誠実な対応に終始している
・妻の離婚慰謝料の額は500万円を下らない

判断2:障害年金

妻は障害年金を受給しているが、家族が介護にあたらなければ介護に伴う費用だけでも賄うことができない程度であるから養育費の算定をするに当たって考慮の対象としない

結論

妻と夫を離婚する、子らの親権者はいずれも妻とする、養育費は1人当たり月額7万円、夫は妻に対し慰謝料500万円及び遅延損害金を支払え

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